可視光とはその名の通り「目に見える光」ですが、これを波長で定義しようとすると、実はきちんと決まった波長範囲がありません。人によって見える範囲に少し差があるため、いろいろな団体、学会で波長範囲をそれぞれ決めており、統一した波長範囲がないのです。
おおよそ380nm~780nmと言われていますが、短波長側は400nmからと定義している場合もあります。そのため光触媒のJIS試験法では「可視光応答型光触媒抗菌加工製品の抗菌性試験方法・抗菌効果」となっていますが、この英語表記は「Test method for antibacterial activity of photocatalytic products and efficacy under indoor lighting environment」となっており、「可視光」という言葉は含まれず「屋内照明環境」となっています。
国内向けにはわかりやすい「可視光」を使っていますが、世界に向けてはより厳密にするためきちんと定義されていない「可視光」という言葉を避けたものです。またこのJIS試験方法では蛍光灯を使い紫外線をカットして可視光を作っているのですが、紫外線をカットするフィルターは2種類あり、400nmまでカットするフィルター(フィルターA)と380nmまでカットするフィルター(フィルターB)のどちらを使ってもいいことになっています。

それでは「屋内照明」である蛍光灯とLED照明にはどのような違いがあるのでしょうか。
蛍光灯もLED照明も種類によって多少違っていますが、決定的に違うのは蛍光灯では380~400nm付近の光(紫外線)を含んでいますが、LED照明ではこの範囲の波長をほとんど含んでいないということです(図1参照、蛍光灯では短波長側(一番左)に小さなピークがある)。
この可視光の範囲はJIS試験法のフィルターAとBの差に近いものになっています。酸化チタン型の様に紫外線の波長範囲で働いていた光触媒はLEDでは全く機能しないことになってしまいます。酸化タングステン型の光触媒は働くことができる波長領域を可視光の波長範囲に広げてきているため、紫外線に近いこの波長範囲(380~400nm付近)が使えるのはもちろんのこと、波長範囲460nm付近の反応性能に大きな影響を与えます。
実際のところフィルターBで高い性能が得られる酸化チタン型の光触媒では必ずしもフィルターAで同じような性能が得られるとは限らないのです。そしてLED照明ではその波長範囲がフィルターAに近いものになっており、活性化できる波長範囲として質的に異なる性能が求められています。

上記の事情を考慮して開発を進めてきたWO3型光触媒ルネは活性化する波長範囲を可視光領域まで広げた事により、LED照明でも高い性能が得られることを実証しました。

左から白熱灯、蛍光灯、LEDの

そして最近の住宅の窓ガラス(防犯ガラスやエコガラス)や車のフロントガラスも紫外線を大部分カットする要素がもとめられています。そのため、紫外線の少ない屋内や車内環境でも可視光によって効率的に働く光触媒が開発され、シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因有機物質や各種VOC、悪臭物質を分解除去できるよう開発されたのが酸化タングステンを媒体とした可視光応答型光触媒である。

今後照明器具もLEDが中心となって行くと思われます。LED照明での性能も高めてゆく必要があります。どちらも同じ可視光光源なのだからどちらでもいいのではないか、と思われるかもしれませんが、可視光応答型光触媒の開発を進める上では大きな違いがあります。

結論を簡単に大まかに言えば紫の外の部分は紫外線領域、紫から赤の部分までが可視光領域、赤から外の部分は赤外線領域、酸化チタンは紫部分の紫外線領域に近い部分にのみ反応する媒体で酸化タングステンは青い部分に反応する媒体。
白色LEDや蛍光灯などの室内灯においては青い部分の波長を多く含んでいる為WO3型光触媒ルネにおいては光触媒反応の活性化が認められると言う事です。